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    • 2018.04.20 Friday
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    許可局麻雀 in 湯河原 '18




    麻雀好きなら一度は体験したいこと。

    それは、温泉宿での一泊麻雀である。


    ここ1年ほど、
    『東京ポッド許可局』というラジオ番組のリスナーつながりで
    隔月ペースで麻雀をしている4人のメンバー。

    T氏、S氏、E氏、そして僕。


    毎回、日程調整や雀荘の予約をしてくれているT氏から

    「今度、温泉宿で麻雀なんてどうですか」

    と提案されたのが昨年の10月だった。


    先にお伝えしたように、麻雀好きならやってみたいに決まっている。

    僕を含めた3人はもちろん乗り気。
    S氏はそれなら、と仕事で使っている車を出してくれるという。

    早速、日程を調整し、すぐさま宿の予約も済ませたのだった。


    宿の手配をしてくれたT氏。

    車の用意と運転をかって出てくれたS氏。

    このメンバーの中では一番麻雀に精通しているので、
    麻雀中の細かい点数計算などを担当する僕。

    そして、特に役割もなく、
    ただただ麻雀をしに行くだけというE氏。


    心待ちにしていた麻雀一泊旅行がついに実現。



    空気の冷たい真冬。

    土曜日の朝。

    いい天気。

    絶好の旅行日和である。

    メインの目的はバリバリのインドアだけど。


    9時に池袋に集合し、いざ出発。

    渋滞もなくスイスイ高速を走り、
    湯河原で早めの昼食にラーメンを食し、
    12時過ぎにはお宿に無事到着した。


    いよいよ勝負の時。

    今回は個人的に負けられない戦いだった。

    というのも、このメンツ、トータルでは勝ち越しているものの、

    前回はまさかのマイナス、しかも最下位に沈む屈辱を味わっていたからだ。


    続けて負けるわけにはいかない。

    目下のライバルであるT氏は、三峯神社のオオカミパワーを
    崇拝するようになってから絶好調である。





    三峰神社で購入した狼のTシャツを着ただけで
    スーアンコ単騎、ダブル役満を
    アガって他3人を震え上がらせた。
    (ちなみに振り込んだのはS氏)


    今回は負けん。

    オオカミパワーにこれ以上後塵を拝するわけにはいかない。

    狼退治を果たすべく、勝負の火蓋は切って落とされた。


    序盤は波に乗れなかったものの、夕食を終え、
    温泉に入った後に流れは一変。

    オオカミパワーのお株を奪うスーアンコツモが炸裂し、
    見事トータルトップを奪還。


    半荘8回、約10時間に及ぶ死闘。

    時計の針は午前2時を指していた。



    カラスかぁで夜が明けて。

    旅館の朝は早い。

    朝食を済ませてなお、チェックアウトの11時まで
    時間があったので、泣きの一回。もう一勝負。

    しかし、返り討ちに成功。

    ダントツトップを取り、真の決着がついた。


    思った以上に勝ったので、宿代が浮いた。

    いや、麻雀でお金を賭けてはいけないので
    気のせいだとは思うが、浮いた気がした。

    麻雀でお金を賭けたことなどない。

    賭けているのはプライドである。


    帰りがけに温泉に立ち寄り、
    東京に戻ってきたのは昼下がり。


    麻雀で勝った負けたはあるものの、みんなで温泉に入ったり、
    麻雀中にラジオクラウドで東京ポッド許可局を流して
    あーだこーだ喋ったり。

    いやぁ楽しかったね、と4人の感想は一致していた。

    あとはガソリンを入れて高速代やら諸々を清算し、
    遅めの昼食をとってお開きだね、と。

    実に楽しい、平和な空間だった。


    そう、この時まではーーー


    このあと起こる忌まわしき事件のことなど
    誰も予想だにしなかったのだから。



    悪夢は突如として我々に襲ってきた。

    それはセルフガソリンスタンドに立ち寄った時のこと。


    ガソリンを入れ終え、さあメシに行こうと、
    車をバックした時だった。























    (ガン!!!!!)







    後方から鈍い音がした。


    なんと、止めてあったバイクに突っ込んでしまったのだ。

    幸い、ライダーは離れた場所にいて無事だったものの、
    バイクの後ろが歪んでしまった。

    すぐに謝罪に行くS氏。

    ライダーのおっちゃんは怒る様子もなく、
    案外さっぱりしていたというのは、
    そのバイクはレンタルバイクで、
    乗り終えてこれから返しに行くところだという。

    レンタルバイク屋もほど近い場所だったため、
    すぐにおっちゃんの誘導でレンタルバイク屋に移動した。

    車を停め、レンタルバイク屋に入るS氏。

    じゃあこれでお開きで、とS氏は言ったものの、
    さらに駐禁を切られようものなら
    目も当てられないと思った僕ら3人はS氏の帰りを待つことに。

    数分後、S氏がレンタルバイク屋から出てきた。

    警察を呼んで現場検証をしなくてはいけないとのことで、
    また先ほどのガソリンスタンドに戻るのだという。


    「じゃ、またね……」


    なんとも後味の悪い旅の終わりになってしまったが、
    僕ら3人はお腹が空いていた。

    思い出はいつもきれいだけどそれだけじゃお腹が空くのだ。


    このあと警察との現場検証を控えたS氏に悪いとは思いつつも、
    リッチに神戸牛のレストランに立ち寄り、遅めの昼食をとる3人。

    そして、S氏に見せつけるように料理の写真を送りつける畜生なT氏。


    「ゔおおーい」


    とS氏からすぐさま返信があった。

    よかった。元気そうだ。



    この旅で感じたのは、ああ、寄席と同じだなと。

    寄席では様々な落語家、色物が出てきて楽しませてくれるけど、
    最後に登場する、トリの真打が一番心に残るものだ。

    極端に言うと、トリの落語以外はほとんど忘れてしまう。


    今回の楽しかった旅も、トリの強烈なインパクトによって、
    おそらく皆、

    「あー、はいはい。最後にS氏が事故ったやつね」

    と、この旅行のことを思い出すことだろう。


    麻雀に惨敗し、最後は事故るという。

    S氏にとっては踏んだり蹴ったりの旅となってしまったが、

    これにめげず、ぜひ次回も参加してほしいと思う。


    勝負に勝ったのは僕だったが、

    今回の旅の主役、MVPは間違いなくS氏だった。

    それがいいか悪いかは別として。


    ツイッターでも旅の様子をつぶやいていたので、

    このブログを読んでいる方の中にはS氏の知り合いもいると思うけれど、

    今度、S氏に会った時は、一言こう声をかけてあげてほしい。








    ドンマイ! と。










    ※ 狼Tシャツに対抗すべく用意した勝負服『東京ポッド許可局 梅ヶ谷Tシャツ』




    ※ 狼退治を決めたスーアンコ(親っかぶりはS氏)




    ※ さらば湯河原、まだ事故る前の平和な帰りの車内から


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      ライブハウスで起きた小さな出来事 後編




      前編はこちら



      ライブで隣に座った女の子に声をかけようか。

      やめようか。

      消極的な僕の背中を押してくれた、

      一週間前の出来事とは……!!!!



      おそらく、読者の大半は察していると思います。

      それで正解です。

      はい。



      失恋です。



      ラジなりフェスの一週間前、僕はお付き合いしていた女性にフラれました。

      詳細はまたべつの機会に、ということで割愛しますが、まぁ、見事にフラれました。


      10-0 の5回コールド負けです。

      失神KO負けです。

      30馬身ぶっちぎられた大差負けです。


      「そんなさぁ、30代男が失恋の一つや二つで何言ってんの?」


      と思うかもしれませんが、

      そこは恋愛レベル超高校級の僕です。


      お医者様でも草津の湯でもフラれた病は治りゃせんのです。


      食べ物はのどを通らず、


      頬はこけ、


      三日間一睡もできず、


      涙が枯れるまで48時間泣き続けました。


      鏡に映る男は、まるで桂歌丸。


      ※話半分で読んでください

      ちょっと泣いたのは本当ですけど。



      まぁ、とにかく人並みに落ち込みました。

      そんな心の傷がかさぶたにもならないうちに

      ラジなりフェスです。


      迷いました。

      こんな気落ちしている状態で楽しめるかなと。

      暗い男が行っても迷惑なんじゃないかと。


      フェスなんか行かずに一人飲み屋に行って


      「何が女だコノヤロー!!!!」


      「勝手にどこへでも行っちまえバカヤロー!!!」


      「オヤジ、続けて二本持てまいれ!!!」




      なんてパーパー言いながら熱燗をぐびりぐびりと

      朝まで一人で飲んでた方がいいんじゃないかと。


      でも。

      でもな。

      せっかく前から予約をしていたんだし。

      気分転換になるかもしれないし。

      やっぱり行こうと。


      そんな思いで来たラジなりフェスでした。



      そして、開演1分前。


      そうだ、僕にはもう失うものなんてない。

      別に女の子と仲良くしてようが

      彼女に後ろめたい気持ちになることもない。

      だって彼女なんていないもん。ははは。



      女の子に声をかけると言ってもナンパするわけでもないし、

      やましい気持ちなんてほとんどないんだから。ほとんど。


      もうどうにでもなればいい。

      半分やけくそな心持ちで、ようやく声を絞り出しました。





      「あのう…… すみません。


      だ、だ、だ、だ、誰のファンですか?」







      隣の女の子は急に声をかけられて驚いた様子でしたが、

      答えてくれました。



















      「え……?


       ああ、A太郎さんです」














      A太郎ファン、一発ツモキターーーーーーーー





      これはラッキー。

      引きが強い。

      僕の運もまだ尽きちゃあいない。

      今ならリンシャンカイホーで四暗刻だってツモれる。






      すかさず、

      これ、よかったらいりませんか?

      と、例のA太郎うちわをカバンから取り出すと、

      女の子はとても喜んでくれました。


      これをきっかけに二、三、会話も弾み、ラジなりフェスは数分押してスタート。

      ライブがまた予想以上に楽しく、しばらく笑いが止まらないぐらい何度も大笑いしました。


      ライブが終わると、

      「楽しかったですね。お疲れ様でした」

      と隣の女の子に声をかけてその場を後にした僕。



      帰りの電車では達成感と清々しい気持ちと。

      楽しかった光景で胸が満たされ、

      気づくと失恋の暗い気分はだいぶ薄まっていました。


      いつまでもメソメソしてても仕方ない。

      終わったことをあーだこーだ言ってももう遅い。


      上を向いて歩こうと、そんな気持ちにさせてくれた夜でした。


      ラジなりフェスよ、どうもありがとう。


      メンバー5人全員に1万円ずつ祝儀をあげたくなりました。

      あげないけど(笑)


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        ライブハウスで起きた小さな出来事 前編




        12月14日、木曜日。

        2017年もあと半月となった寒い夜。

        僕はライブハウスへ行った。

        『ラジなりフェス』である。

        『ラジなり』とは、毎週金曜日にポッドキャストにアップされる、

        二つ目の落語家5人のおしゃべり番組である。

        メンバーは


        昔昔亭A太郎(せきせきてい えーたろう)

        柳亭小痴楽(りゅうてい こちらく)

        瀧川鯉八(たきがわ こいはち)

        春風亭昇々(しゅんぷうてい しょうしょう)

        春風亭柳若(しゅんぷうてい りゅうじゃく)




        毎週欠かさず聞いている番組(たまに聞いてないかもだけど)なので、

        今回の公開収録を含む『ラジなりフェス』は非常に楽しみにしていた。


        よし。

        せっかくだからこれを持って行こう。








        そう、A太郎うちわである。


        昨年末の落語会『大成金』の物販で購入した世に二つという名器。

        当初は数千円の値がつけられていたものの、帰り際にふと見ると

        なんと10円まで値が暴落していたため、ノータイムでゲットした。


        しかし、ふと冷静になってみると、これ……







        男が持ってたら気持ち悪くね???







        落語家、昔昔亭A太郎を知っているならまだいい。

        すぐにギャグだとわかるから。

        しかし、全く知らない人がみたらどう思うだろう。

        ドン引きもいいところだ。

        蔑んだ目でみられること必死。


        これは女子が持っているべきシロモノだ。

        購入してから半年以上経過してからそう気付いた僕は、

        このラジなりフェスでA太郎ファンの女子に差し上げようと思いついた。


        フェス当日。

        カバンにA太郎うちわを忍ばせておいた僕はぎゅうぎゅうの会場へ入り、席に着いた。

        通路側に座ったのでお隣は右側だけ。

        お隣は、女性の、おそらくお一人様のようだった。


        「誰のファンですか?」


        と話しかけて、A太郎ファンでなければ前後の方に話しかけて。

        頭では考えるものの、いざ声をかけようとすると躊躇してしまう。


        何せこの僕は筋金入りの引っ込み事案。

        臆病者で小心者。

        ミスター社交性ゼロ。


        ああ、どうしよう。

        スマホの時計を見ると19:29だった。

        開演時間は19:30。

        いざスタートしてしまうともう声をかけるきっかけはないだろう。


        (べつに声かけなくてもいいか)

        (気まずくなったらヤダしな)

        (いいや、うちわ、持って帰るか……)



        おそらく今までの僕なら声はかけなかった。

        しかし、そんな僕の背中を押してくれたある出来事が、つい一週間前にあった。




        その出来事とは……











        つづく


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          衝撃の回答、小学生女子の好きな落語家とは

          9月24日に行われた芸協らくごまつり。

          「また落語の祭りかよ」

          というごもっともな意見もあると思う。


          黒門亭クイズ王でギャーギャー騒いでいたのは

          落語協会のお祭り『謝楽祭』で、

          今回は落語芸術協会のお祭り『芸協らくごまつり』だ。


          落語芸術協会所属の落語家は、主なところだと


          桂歌丸

          三遊亭小遊三

          滝川鯉昇

          春風亭昇太



          などである。


          落語、演芸好きとしては参加しないわけがなく、

          当然、僕も参加した。


          芸協らくごまつりには回答するだけで

          福引ができるアンケートがあるのだが、

          ふと、小学校高学年ぐらいの女の子がお母さんとアンケートを

          書いているところを見かけた。


          小学生のうちから落語好きとは、中々シブい。

          いいね!

          と、心の中のいいね!ボタンを押す。


          失礼とは思いつつ、つい気になってしまい、

          女の子が書いているアンケートを覗き込んでしまった。


          アンケートのうち特に気になる設問、


          『応援している一番好きな芸人を一人教えてください』



          この回答を見たとき、僕は悶絶してしまった。


          その、

          女の子の回答が……





          これだっ































          〔 春風亭 昇・・・ だーれだ(ハート) 〕


























          何それカワイすぎんだろ!!!!








          落語家の弟子は基本的に師匠の名前から一文字もらってつけられる。

          よって、春風亭昇太の弟子には、『春風亭昇○』という落語家が大勢いるのだ。

          春風亭昇々
          春風亭昇也
          春風亭昇吾
          春風亭昇羊

          などなど。


          つまり、女の子が好きなのは

          春風亭昇太一門のうちの誰かには間違いないが、

          そこは明かさず焦らすという。


          僕がもし春風亭昇太の弟子だったとして。

          こんな可愛らしいアンケートを見たら

          俺だ俺のことだと弟子同士で言い合いになり、

          最終的には取っ組み合いの喧嘩になること必死。


          しかし、かわいらしいと感じた一方、

          すでに女としての魔性の才能が開花しようしているのかと

          思うと恐ろしい。


          この子も、大人になったら

          吉原の花魁のように手練手管で男を手玉に取るのだろうか。


          思春期を迎えてもぜひ落語を聞き続けて、

          可愛らしいまま真っ直ぐ成長していってほしいなと、

          他人のおせっかいながら思った次第でありました。








          0

            '17 黒門亭クイズ王 真の決着の時





            (前回の内容はこちら

             決勝の○×クイズ、最後の二人に残る。

             最後の問題は『現在、落語協会に十代の噺家はいない。○か×か』)



            初志貫徹、僕は ×

            一方、相手のキャップ男は動いて ○ へ。



            司会の柳家小ゑん師匠がマイクを手にする。


            「それでは発表します。

             正解は……」



            会場の誰もが固唾を飲んで耳を傾ける。

            ○か、×か。

            連覇か、新チャンピオンの誕生か。



            目を閉じた僕は、

            当日、謝楽祭の午前中の出来事を思い出した。







            〜〜〜〜〜〜


            謝楽祭開始時間の10時よりも早く到着した僕は、

            落語会の当日券を求めて行列に並んでいた。


            落語会の第一部には大好きな隅田川馬石師匠が出演する。

            昨年、黒門亭クイズ王で優勝し、

            席亭権を行使して開いた落語会『マッシュ寄席』にも出ていただいた師匠である。

            大好きな馬石師匠の落語を聞いて士気を高め、

            午後のクイズに臨もうという目論見もあった。


            行列に並び、当日券の販売開始までまだかまだかと待っているところで、

            ふと、歩道を歩く浴衣がけの男が目に付いた。

            男は、背が高く、メガネをかけ、白い日傘を差していた。



            (あれ……?

             今の人……

             もしかして……











            タツオさんじゃね????)





            サンキュータツオさん。

            漫才・米粒写経のツッコミ。

            僕の好きなラジオ番組『東京ポッド許可局』のレギュラーの一人だ。


            落語好きのタツオさんが

            2014年に始めた落語会『渋谷らくご』をきっかけに

            僕も落語を好きになった。


            いわば、落語の素晴らしさを僕に教えてくれた恩人のような存在。



            すぐさま後を追いかけたかったが、

            落語会のチケットを買わないわけにはいかない。

            ジリジリした思いをこらえて、ようやく時間になり、

            チケットを手にしてから

            会場内でタツオさんを探した。


            意外にもすぐに見つけることができ、

            尾行しながら声をかけるタイミングを図った。


            「あのう、、タツオさん、サインいただけますか?」


            思い切って切り出すと、快く応えてくれた。

            今度の東京ポッド許可局のイベント行きます、と伝えると

            何て書きますか? と聞かれたので

            ”マッシュ”ってアカウント使ってます、と答えた。



            「はい」







            『マッシュ局員』と書いてくれたタツオさん。

            東京ポッド許可局のリスナーとしてはうれしい限り。


            さらには


            「あのう、、握手もいいですか?」


            と、ここぞとばかりにお願いすると、

            返ってきた一言がこちら。



































            「……わがまま」








            わがまま。

            いや、確かにわがままだけれども。

            まさかそう返してくるとは予想だにしていなかったので

            あっけに取られてしまった。

            さすが一癖も二癖もあるタツオさんらしい返し。


            そう言いながらも握手をしてくれ、

            タツオさんはさっそうと去って行った。


            わがまま、か。









            〜〜〜〜〜〜



            ハッと意識が戻った。


            そうだ、今は黒門亭クイズ王、決勝の舞台。

            こんなことを思い出している場合じゃない。



            と言うより、本編とはまっっっったく関係ない回想シーンを

            ぶっこんでいる場合じゃない。



            「どうでもいいから早く結果を教えろよ」

            と、そろそろブーイングが起きそうなので。


            では。

            改めておさらいすると。


            僕は ×

            相手は 


            ついに真の、真の決着の時。



            「正解は……































            マルです!!!!!!!」





















            ぐにゃ〜〜








            ぐにゃ〜、再び。

            ぐにゃ〜な話、略して『ぐにゃバナ パート2』である。



            先ほどはミラクルな判定覆りを見せたが、

            今回はそれもなく。


            決着。

            敗北。

            黒門亭クイズ、連覇ならず。

            嗚呼。


            「もう一度、マッシュ寄席を」

            と期待してくれた方々に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。




            (マッシュ寄席の席亭として、

            優勝を取らないといけないところだったのに、

            ごめんなさい。


            自分の気持ちが

            最後は勝てるだろうと思ってたんですけど

            取り返しのつかないことをしてしまって……)



            金メダル確実と言われたリオデジャネイロ五輪で

            まさかの銀メダルに終わった吉田沙保里選手の気持ちが

            痛いぐらいわかる。

            勝って当然と国民全員から期待された時のプレッシャー。

            わかるよ、吉田。



            舞台上では優勝インタビューが行われた。

            次に準優勝のインタビューもあったが、

            悔しさで、気の利いた面白いことも言えず。


            ああ、終わったんだなと。


            僕は肩を落として舞台を降りた。










            カラスかぁで夜が明けて。


            翌日になるとすっかり敗戦のショックから立ち直っていた。

            だって、よく考えると準優勝でもすごい。


            2016年 黒門亭クイズ王 優勝
            2017年 黒門亭クイズ王 準優勝



            これを履歴書に書いたら、
            (有)東京かわら版なら即採用されそうな経歴である。

            ※東京かわら版とは日本で唯一の演芸専門誌



            実は、今年はまず勝てないと思っていた。

            落語の知識はそれほどでもないし、

            ましてや落語の知識があったってなくたって

            関係ない、誰も知らないような問題が出るクイズである。


            月に叢雲、花に風。

            そんなに奇跡は続かない。


            当日までは

            「今年も必勝、連覇します!」

            と息巻いてビッグマウスを叩いておいて、

            一問目で外れて

            「あの強気はなんだったのか」

            とツッコミが入る展開を予測していた。


            ところが、そんな思いに反して

            今年もあれよあれよと最後の二人にまで残ってしまい、

            舞台上で心臓バクバクだった。


            最後はきっと欲が出たんだと思う。

            優勝して、また自分が落語会を開いてやろうという欲が。

            利己主義。

            わがまま。



            相手は正解を知っていたというより、

            僕が×だったので、あえて○に動いたのだろう。


            無欲で謙虚な姿勢に、勝利の女神が微笑んだのだ。


            また来年、挑戦しよう。


            チャンピオンの座は失ったが、再び帰ってくるよ。

            忘れ物を取りにね。



















            0

              '17 黒門亭クイズ王、決着の時



              (前回の記事はこちら

              決勝の○×クイズ、あっという間に残り2人になり、いよいよ最終問題。)


              決勝問題の相手。

              最後の敵。

              それは、なななな何と……!!











              舞台下で絡んできた

              酔っ払いじじい!!!!



              ※第1話参照























              ……だったら面白かったのになぁ。



              そこまで物事はうまく働かなかった。

              時に事実は案外平凡。

              もー、勝ち上がってこいよじじい。

              チャンピオン、がっかりだよ。



              相手は見知らぬ男だった。

              地味な服装に、キャップを目深にかぶっている。

              年の頃なら四十そこそこだろうか。

              大人しそうな雰囲気が何やら不気味である。


              そうこうするうちに

              運命の最終問題が読み上げられる。


              第7問。





              「現在、落語協会には十代の噺家はいない。○か×か」





              この問題を聞いたファーストインスピレーションは、


              (十代、確かいるんじゃないかなぁ……)



              難問。

              最後にマジなヤツきやがった。

              真の落語マニアならわかりそうな、絶妙な問題。


              うん。

              けど、確かいたはず。十代の噺家。



              ならば答えは×だ。


              キャップ男も×から動かない。


              決着は次の問題に持ち越しかーーー


              誰もがそう思った刹那。

              キャップ男はゆっくりと○へ動いた。


              おお〜

              ざわつく観客。


              (え? いいの? 勝っちゃうよ? ホントに連覇しちゃうよ?)


              ファイナルアンサー。



              キャップ男は○


              僕(チャンピオン)は×


              いざ、勝負。




              「それでは発表します。

               正解は……


























              (つづく)





              0

                '17 黒門亭クイズ王のゆくえ




                前回の記事はこちら

                (黒門亭クイズ王決勝、問題は

                 「入船亭扇遊師匠の奥様は、元芸者である。○か×か」)



                「私…… この問題わかりますっ」


                背後から声がした。

                振り返ると、声の主は会場でばったりお会いしたMさんだった。

                聞くところによると、Mさんの知り合いの同級生が扇遊師匠の奥さんだというのだ。

                奥さんは元CAさんなのだとか。


                何この偶然。

                何この奇跡。


                たとえ一問でも確実に正解を知っているのは大きい。

                去年に引き続き、優勝への追い風だ。


                先ほど引いた落語みくじを思い出す。





                『神様からのお助けがあるでしょう』


                これかッ……!


                神ッ……!


                神様のお助けッ……!!


                ぞろぞろっ……!!



                元芸者ではないのだから、迷わず×へ。



                正解は……

























                えっ














                ぐにゃあ〜〜






                敗退ッ……!



                圧倒的敗退ッ……!


                絶対正解だと思った問題でまさか敗退するとは。


                涙を流しながら

                甲子園よろしく湯島天神の砂を持ち帰ろうとしていたその時、


                司会の小ゑん師匠の説明に、何やらざわつく舞台上と観客。


                「はい、というわけで、扇遊師匠の奥様は元CAさんでした〜」




                んん?


                つーことは、×が正解じゃね?


                誰かが指摘し、判定が覆った。


                「ごめんごめん、正解は……」





                ×





                起死回生ッ


                地獄の淵からの生還ッ


                不死鳥のごとく蘇ったマッシュッ











                (小ゑん、ちゃんとやれコノヤロウ!!!)




                ……と罵声を浴びせたい気持ちをぐっとこらえて、次へ。



                第5問。



                「林家はな平が屋台で売っている からあげ はブラジル産である。○か×か」




                この問題を耳にした参加者及び観客のみなさんの心の声……















                (知らねえよっ!!!!!)











                しかし、僕はこういう問題を待っていた。

                誰も正解を知らない問題。

                半か丁か。

                ここが勝負師の見せ所。

                問題を聞いた瞬間、少ない方へ行こうと決めた。


                残るは16名ほど。

                ざっと2対1ぐらいに割れた。


                少ない方は×だ。



                正解は……













                ×






                これで一気に残り6名。

                ここで一緒に舞台に上がっていた知り合い数人は皆敗退。

                客席に周り、僕の応援をしてくれている。

                皆のためにも勝たねばならぬ。

                もう一度マッシュ寄席を開くのだと気合いを入れ直す。






                「お兄さーーーーーーーん


                 頑張ってぇぇーーーーーーーーーー」






                客席から女性の声がした。

                声のする方を見ると知り合いではなかった。

                が、僕へ向けて手を振ってくれている。


                しかし、どこかで見たような、あの二人。




                あっ


                つい先ほど、白鳥師匠のタロット占いに並んでいた時のこと。

                とっくに整理番号を受け取り、

                時間に合わせて戻ってきて順番待ちをしていると、

                女性2人組が後ろに立ち、ごにょごにょ喋っていた。


                どうやら整理番号が配布されたこと知らない様子だったので

                かくかくしかじかと説明して差し上げた。



                あ、そうなんですかぁ

                ざんねんー

                じゃあ仕方ないねー

                タロット占い、当たってたか後で教えくださいね〜

                あははー


                などとやり取りをしたお姉さん方だ。


                年の頃なら二十三、四。

                いや、化粧が濃かったから、三十でこぼこ。

                待てよ、帽子をとったら四十二、三。

                意外やびっくり六十手前……



                と言うのは冗談で、おそらくアラフォーぐらいのお姉さん方。

                まさかここで黄色い声援を浴びることになるとは。



                ありがとう、ハニーたち。

                俺、優勝します!







                勢いに乗って

                第6問。



                「古今亭志ん橋師匠は、40年前からあの髪型(坊主)である。○か×か」





                再びみなさんの心の声……!!















                (知らねえよっ!!!!)






                ここは冷静に考えてみた。

                志ん橋師匠は多分70歳ぐらい。

                となると、30代から坊主頭だったかどうか。

                現在でも若くして坊主頭の真打も何名かいる。

                じゃあ○でも不思議じゃないな。



                すると×の方が多いではないか。

                ここも勝負、少ない方だ。

                へ。


                正解は……




































                沸く会場。

                テンションが上がるお姉さん方。

                拳を握りガッツポーズの僕。


                ついに。


                ついに今年もあと2人まできた。

                最後の問題で正解すれば優勝。

                前人未到の黒門亭クイズ王連覇。




                決勝の相手は、、っと






                お、お前は……!!






                まさか、

                まさか、決勝の相手があの男とは……!!!








                to be continued.......



                (次回、涙の最終回。『'17 黒門亭クイズ王 決着の時』 公開時期未定)








                0

                  防衛なるか?! 黒門亭クイズ王座 の巻

                   


                  時は平成29年9月3日。

                  東京は湯島天満宮、境内。

                  ついにおとずれた、落語王を決める世紀の一戦。

                  その名も『黒門亭クイズ王決定戦』


                  優勝賞品は落語会を開く席亭権。

                  前年度のチャンピオンのこの僕が、挑戦者を迎え撃つ。


                  謝楽祭も佳境に差し掛かった午後三時。

                  予選のペーパーテストを通過した猛者達が

                  謝楽祭メインステージ下へと集う。

                  僕も当然ながらペーパーテストをクリアした。

                  まるで赤子の手をひねるように。

                  ディフェンディング・チャンピオンが予選敗退するわけにはいかないのだ。



                  「クイズ、何? ここでいいの? ここ?」


                  ベロベロに酔ったおっさんが絡んでくる。


                  「いや〜、強いお酒売ってるからさ〜、

                   いっぱい飲んじゃったよぉ。

                   1問目でダメだなこりゃ〜、ははは〜」



                  ご機嫌なじいさんである。

                  こちとりゃ飲みたい酒も絶ってこの一戦にかけているのだ。

                  (一杯だけ飲んだけど)

                  このじじいにだけは負けられない。

                  このじじいにだけは絶対に負けられない戦いがそこにはある。


                  しかし、こういうのが意外と強いかもしれない。

                  酔拳よろしく無類の勝負強さを発揮する可能性もある。

                  油断大敵。

                  じじいを軽くいなした。



                  今年は例年以上に決勝進出者が多いようで、

                  1問目は舞台下で行われることとなった。

                  静かに運命の決勝戦の幕が切って落とされた。



                  第1問。

                  「コワモテで有名な噺家、三代目橘家文蔵は、前科がある。○か×か」




                  いっ








                  いきなりぶっこんできやがった……!!





                  落語ファンにはおなじみの、泣く子も黙る文蔵師匠。

                  今日も『立ち呑み屋 文蔵』の屋台を切り盛りしている姿を目撃したが、


                  はっきり言ってヤ○ザにしか見えない。

                  どっからどう見ても○クザなのだ。

                  間違いなくヤク○の親分。



                  (でもこれ、前科持ちだったら会場ドン引きでは……?)


                  冷静に×を選ぶ。


                  正解は……





                  ×






                  ひとまず第1問クリア。

                  高校野球の名門校でも、甲子園の初戦が一番大事と言われる。

                  足元をすくわれがちだ。

                  その初戦を取った。


                  第1問はさすがに大勢が×を選んでいたが、

                  逆に言えば、もし○が正解なら一気にチャンピオンへ近くところだった。

                  ○を選んだ勝負師達への尊敬の念を忘れないだろう。



                  ここからが本番。

                  正解者が全員舞台へ上がり、


                  第2問。


                  「今年は、五代目柳家小さん の没後15年目である。○か×」





                  ううっ


                  結構真面目な落語マニアック問題。

                  これは想定外だった。

                  まだ落語を聴き始めて3年ほどの僕にとっては超の付く激ムズ問題。

                  小さんはおろか、志ん朝、談志の高座だって知らないのだ。

                  舞台上のライバルたちは熟練のじじいが多数を占めている。


                  しかし、この問題は○×割れた。


                  (没後15年なら記念の落語会とかありそうだけど、聞いたことないよなぁ)

                  誰かのささやきが聞こえてきた。


                  じゃあ逆に行ってやろうじゃないの。

                  僕はへ。



                  正解は……
























                  辛くも正解。


                  去年とは異なる出題の傾向だ。

                  去年は『市馬会長の行ってる床屋の代金は2600円である。○か×か』とかだったのに。


                  誰も知らない問題の方が落語キャリアの浅い僕にとっては有難い。

                  なぜならその方が知識での差が生じることなく、五分に戦えるから。


                  動揺が隠せないまま、

                  第3問。


                  「今年の圓朝忌、奉納落語をつとめたのは三遊亭円丈である。○か×か」



                  また真面目かっ


                  (これは確か円丈師匠だったかなぁ……)

                  と悩んでいると、皆一斉に○へ向かって行った。

                  なんと全員が○を選択。


                  ここで×に飛び込んで、もし正解すれば即優勝。

                  そんなごっつぁんゴールの誘惑に負けず、僕もへ。


                  正解は……













                  「みなさんすごいですね〜」

                  司会の小ゑん師匠が感嘆の声を上げる。

                  レベル高え。

                  ディフェンディングチャンピオン、萎縮気味の中、

                  第4問。



                  「入船亭扇遊師匠の奥様は、元芸者である。○か×か」



                  くっ……

                  わかんねぇ

                  どっちだ


                  ついにここまでかーーー


                  万事休すと天を仰いだその時、救いの手が差し伸べられた。


                  なんとこの難問の正解を知る人物が登場することになるという


                  ここからが面白くなるところではございますが、


                  なんとなんとぉーーーーー









                  お 時 間 が いっぱいいっぱい








                  この続きはまたいつの日か申し上げることといたしまして

                  本日のところは、


                  『防衛なるか?! 黒門亭クイズ王座』の序 でお開き。


                  ご静聴、誠にありがとうございました。


                  (続きは近日公開予定。……たぶん)





                  0

                    2017年、黒門亭クイズ王への決意




                    来たる2017年9月3日、日曜日。

                    落語協会のお祭り、謝楽祭が今年も湯島天神でおこなわれる。

                    その謝楽祭のイベントのひとつ、黒門亭クイズ王。

                    前年度のチャンピオンは何を隠そう、このわたくしである。(親指で自分の顔を指しながら)


                    ♩やがて リングと 拍手の渦が

                     一人の男を 飲み込んでいった

                    (ゆぁきんぉきんす)



                    今年の意気込みは去年の比ではない。

                    何しろ史上初の連覇がかかる大事な一戦だ。


                    ふと瞳を閉じると、

                    去年の決勝戦の記憶が昨日のことのように蘇ってくる。


                    見知らぬおっさんとのガチンコタイマン勝負。

                    の雨が降る死闘を制したのは僕だった。


                    (実際はただの○×クイズで、心優しいおっさんが、「好きな方でいいよ」と大人の対応で言ってくれたので、

                     ○と×、立ち位置を入れ替わった方が盛り上がるかなーと思い、

                     ×の方に立っていた僕があえて○に変更した結果、まさかの優勝)




                    今年も力の差を見せつけ、連覇を果たし、

                    優勝賞品である落語会の席亭権を行使し、

                    第2回マッシュ寄席を開くのだ。


                    もしも本当に優勝したら、

                    昨年のマッシュ寄席に来てくれた方々はきっと喜んでくれる。

                    半分冗談だろうが、

                    「またやってください」

                    「第2回マッシュ寄席期待してます」

                    と、多くの方に声をかけてもらった。


                    前回お誘いしたが都合が悪くて来れなかった方も、またお誘いしよう。

                    落語関係の知り合いも多少増えたので、新たにお誘いしたい方もいる。

                    期待はふくらむ。


                    だが、ふと思った。


                    去年の会場、落語協会の2Fでやるなら、多くても40名が限界。

                    お誘いする人数には当然限りがある。


                    さらには、僕の知りあいでないその他大勢の落語ファンの方々は

                    どう思うだろうか。


                    (なんだよ、また同じ奴が優勝したのかよ)

                    (俺も好きな噺家呼んで落語会開きてーよ)

                    (何これやらせ? ずるくない?)


                    などなど。


                    僕がもし外から見て、同じ人が2年連続で優勝したら、おもしろく思わない。


                    また、自分の好きな噺家を呼んで、好きに知り合いに声をかけて落語会を開くという、
                    落語ファンにとって夢のような体験を他の方にも味わってほしい思いもある。

                    落語会を開いた思い出は、どんなお宝グッズよりも価値がある。


                    落語はみんなのものだ。

                    独り占めするのはよろしくない。


                    そうだ。

                    一度優勝した者はもう参加すべきではないかもしれない。


                    ♩わずか ばかりの 意識の中で

                     君は 何を 考えたのか

                    (ゆぁきんぉきんす)



                    しばし悩んだ結果、、、




































                    やっぱり参加しまーーーーーーーーす




















                    えー、

                    だってさ、だってさ、

                    別にズルするわけじゃないしさ。


                    参加費払ってちゃんと戦って

                    勝っちゃったら仕方ないじゃん。

                    勝負は時の運だもん。

                    悔しかったら優勝してみろってんだ。

                    バーカバーカ!





                    ……と、いうわけで、いくなる葛藤を乗り越えて

                    今年も参加することに決めました。


                    もしも、万が一、本当に連覇を達成してしまったら。

                    第2回マッシュ寄席は開催します。


                    が、

                    その時は、来年は本当に辞退しようと思います。

                    三連覇はやりすぎです。



                    だから、その代わり今年は勝ちたい。

                    いや、必ず勝つ。


                    エア・チャンピオンベルトを巻いて

                    正々堂々と戦うことをここに誓います。


                    私たちは落語を愛しています。


                    平成29年8月28日

                    落語ファン代表 マッシュ










                    0

                      タワレコ亭、サイン会での一件




                      7月11日に行われたタワーレコード渋谷店での『タワレコ亭』

                      講談師、神田松之丞(まつのじょう)さんの初CD発売を記念したイベントである。

                      前売りチケットは当然のように完売。


                      ここのところ、メディアへの露出が増えたものの、まだまだ世間一般での認知度は高くはない。

                      けれど、演芸ファンなら知らない人はまずいない。

                      今、飛ぶ鳥を落とす勢いの松之丞という講談師を。


                      僕は2015年の渋谷らくごでその高座を目の当たりにして一発でハマってしまったクチだ。

                      『ルパン三世カリオストロの城』のクラリス並みに心を持っていかれた。

                      以来、定期的に松之丞さんの会に足を運ぶようになり、今日に至る。


                      そんな中、待望の初CDリリース。

                      CD発売を記念しての寄席、タワレコ亭。おまけにサイン会ありでゲストは売れっ子漫才師ナイツ。



                      「松之丞を追え! 地の果てまで追うんだ!」と銭形のとっつぁんも脳裏をよぎった。

                      これは行かない手はない。

                      すぐさま前売りチケットを購入し、まだかまだかと心待ちにしていた会だった。


                      タワレコ渋谷店の地下1Fのイベントスペースは超満員。

                      19時、定刻通りに会は始まった。


                      まずは松之丞さんの新作講談『桑原さん』

                      続けてゲストのナイツの漫才

                      仲入りを挟んで

                      松之丞&ナイツのトーク

                      そして最後に松之丞さんの古典、慶安太平記『鉄誠道人(てっせいどうじん)』


                      講談二席はどちらも大好きな噺。

                      ナイツの漫才、松之丞さんを絡めてのトークも楽しく、期待を上回る満足感だった。


                      終演後にはCD購入者限定のサイン会。

                      実は書いてもらいたい文言があった。タワレコ亭だからこその文言を。

                      いよいよそれを書いてもらえる、と心躍る気持ちを抑え、サイン会の行列に並ぶ。


                      行列も前方にあと5人まで迫ると、松之丞さんとお客さんの話している内容が少し聞こえてくる。


                      「どこで知っていただいたんですか?」


                      とお客さん一人ひとりに聞いている松之丞さん。

                      ある人はラジオ、またある人は渋谷らくご、またある人は寄席と答えている。


                      僕は、「2015年1月の渋谷らくごです」としっかり受け答えできるよう頭の中で唱え、いざ自分の番がきた。

                      「よ、よろしくお願いします」


                      すると松之丞さん、「どこで知っていただいたんですか?」

                      と僕には聞かず、こう言った。




















                      「……マッシュさんですよね?」














                      ええええええええええええええええ
                      ??!









                      バッ











                      バレてるゥゥゥッゥぅうぅぅうぅぅぅぅうぅ












                      いや、「バレてる」は適切ではない。

                      正確には「覚えてくれていた」だ。




                      それは昨年、2016年の芸協らくごまつりでのことである。

                      松之丞さんにサインをお願いした時のこと。

                      「松之丞さんのツイッターも楽しくて、よく見てます」

                      と伝えたところ、アカウント名を聞かれたので伝えると、

                      ああ、マッシュさんですか、分かります、と答えた松之丞さん。


                      思い起こせば2015年1月の渋谷らくごでの高座に衝撃を受けた僕は

                      松之丞さんのツイッターアカウントをすぐにフォローして、

                      「とても楽しい一席でした! 最高でした!」と興奮をそのままぶつけるような感想を送ったのだった。

                      すると丁寧な返信がきて感激したのを覚えている。


                      また、松之丞さんの姉弟子である神田鯉栄さんの真打披露興行のチケットをツイッターを通じで1枚購入したい旨を伝え、池袋演芸場の前で手売りしてもらったこともあった。

                      (今考えると、池袋の路上で男二人が言葉少なに現金のやりとりをしていたので警官が通ったら職務質問されかねない状況だったと思う)


                      こういった背景はあるものの、思いがけない一言に鳩が豆鉄砲食ったかのごとく動揺した僕だったが、ここで怯んではいけない、と、書いてもらいたい文言をお願いした。


                      それがこちらである。









                      言うまでもなく、タワーレコードのキャッチコピーである『No music, No life』のパロディだ。


                      「ノーコウダン、ノーライフ」って書いて欲しいんですけど、、とリクエストすると、

                      松之丞さんは「ふふっ」と笑ったあと、嫌な顔一つせず丁寧に書いてくれた。


                      いろいろ話しもしたかった。

                      上野広小路亭で小銭じゃりじゃりジジイが出現した日、僕客席にいたんですよ、とか。

                      『問わず語りの松之丞』(ラジオ)で一度メール読んでもらって嬉しかったです、とか。

                      しかし、本人を前にして緊張もあり、また、サイン会の行列はまだまだうしろまで続いている状況もあるため、手短に済ませなければならない。


                      「あのぅ……。慶安太平記、すごく好きなので今日は嬉しかったです」


                      とだけ伝えると「そうですか。ありがとうございます」と応えてくれて僕はその場を後にした。


                      まさか自分の顔と名前を覚えてくれているとは思わず、驚き、嬉しくもあり、なんだか恥ずかしくもあったが、
                      兎にも角にもミッションは遂行できた。


                      帰宅後、改めてCDを取り出すと、重大な事実に気がついた。



                      こ、これ、松之丞さん……

















                      サイン入ってねーーーーーーじゃん!!







                      そうなのだ。

                      「神田松之丞」
                      とサインがなければ誰が書いたか分かりゃしない。

                      なんなら自分で書いて自作自演したと疑われても仕方なし、証明する術もない。


                      だが、しかし。

                      本来サインとは、直接本人に対面して書いてもらったという事実、思い出が嬉しいのであって、
                      他人に見せびらかして自慢するためのものではない。


                      だから、これが本当に神田松之丞さんが書いたものなのかどうかは、
                      自分さえ分かっていればいいのだ。

                      たとえ松之丞さんが忘れても、僕は一生忘れない。

                      このCDを見ればいつでもこの日のことを思い出せる。

                      それでいいんだと思う。
















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